SL小説「Kの告白」004:わたしは三度自殺した

いやもっとなのかも知れない。
バーチャルライフを辞めることは、ワールドでの死を意味する。
バーチャルライフでは、他人から辞めさせられることも、自然死も存在しないので、自ら選んだ死のみ存在するのがこのワールドとも言える。

では何故私は死を選んだのか?
一つには苦しさから逃れるため。
ワールドに居れば必然的に思い出したくないことを思い出してしまうから。
一つには絶望。
未来に希望を見出せない世界では生きていたくなかった。

ワールドで完璧に自殺するには、フレンド登録を抹消する必要があった。
ワールドでのつながりをすべて絶ってこその自殺である。
それがワールドで死ぬということだ。

ワールドでの自殺とは人とのつながりを完璧に遮断して未来永劫再びつながることのない意志表明でもある。

バーチャルライフでの一番の楽しみは人とのつながりであったが、同時に、一番の苦しみも人とのつながりであったからだ。

私は同じことを三度も、あるいはもっとかも知れないが、繰り返してしまった。
私は学ばなかったのか?そうかも知れないし、もしかしたらという期待もあったのかもしれない。

自分が変わらなくても今度は上手くいくかもしれない。
そう思っていたのかもしれない。
しかし再びあるいは三度同じ過ちを繰り返してしまう。

現実の世界では死は一度だけだが、このワールドでは、何度も死ぬことができた。

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