小説「Kの告白」002

何かが始まるのは常にワクワクするものだ。
それは意識が未来に向かうからかもしれない。
未来をこの今に生きることがワクワクさせる。

当時私は何をやっていただろう。
バーチャルライフというパラレルなワールドで。

リアルワールドに、「マトリックス」という映画ある。
あの映画の中にもバーチャルワールドが出てくるのだが、あのバーチャルワールドでは、バーチャルワールドの死がリアルワールドに直結している。

バーチャルワールドの中で死ぬと、リアルワールドでも死んでしまうのだ。
なぜ?と思ってしまうが、あの映画の中ではそれがリアルだった。

幸い私の住んでいるこのバーチャルライフでは、ワールドで死んでも、リアルワールドの自分が死ぬことはない。

夜見る夢の中では、もしそれが夢だと気づけば、何をやってもいいはずだ。
だってそれは自分だけの夢の世界なんだから。
だけど大抵夢だとわかっていても、他人に悪いことをするのは躊躇する。

同じようにこのバーチャルライフでは何をやってもいいはずだ。
だってリアルライフの自分が死ぬことはない。
そういう点では夜見る夢の世界とここは似ている。
ただひとつ違う点は、ここでの他人は自分と同じようにリアルライフで生きているということだ。

実際私がこのワールド、バーチャルライフに来た時、一番最初に行った場所はアダルトな場所だった。だって何をやっても死なないし、私はここではリアルライフとは別人格だ。

そこでは夜な夜な考えられる限りのエロチックな関係が繰り返されていた。
え?私もそのエロチックな関係に参加したかって?
それは……お約束通り読者の想像にお任せしたい。

ただこのアダルトな場所においても多くの出会いは存在した。
エロチックな関係はなくても、ごく普通の関係である。
一緒にクラブに出掛けたて踊ったり、遊園地に行ってみたり、ごく普通に楽しかったりした。

表では、生DJ付きのダンスホールを企画しつつも、裏ではアダルトな世界にひかれていた。今考えると、表の世界では満たされなかった部分を裏の世界で満たそうとしていたのかもしれない。

タイトルとURLをコピーしました